
Beth Gibbons JAPAN TOUR 2025ライブレポート|3列目で浴びた、ベスの声と生音
2025年12月3日、ZEPP NAMBA。
気温10℃を下回る寒さの中、Beth Gibbons JAPAN TOURを観た。Portisheadのフロントマンとして長年追ってきたアーティストを、ついに目の前で観る夜だった。Portishead名義での来日はこれまでなく、ワンマン公演としては実質的な「初の単独体験」でもある。
Portisheadから、Beth Gibbonsへ
出会いはPortisheadからだった。
90年代トリップホップを象徴するバンドとして、そのかっこよさに痺れてファンになった。Beth Gibbonsのソロアルバム『Lives Outgrown』は、今回の来日をきっかけに聴いた作品だ。正直に言えば、やはりPortisheadの音楽が好きだ。それでもこのライブに向かったのは、見たかったアーティストをやっと見られるという、それだけの理由があれば十分だった。

前から3列目という体験
運良く前から3列目の中央席だった。
この距離でしか感じられないものがあった。Beth Gibbonsの呼吸が聞こえた。ギターのカッティング音が、スピーカーを通らない生音として届いた。このクラスのアーティストをこの距離で観られることは、なかなかない体験だ。
音量は大きすぎず、むしろ控えめな設定だった。その分、生音の質感が際立つ。「静」が多い分、楽曲の中で訪れる「動」がよく映える構成で、近い距離にいたことでその緩急がより細かく伝わってきた。

『Lives Outgrown』という作品
今回のライブは『Lives Outgrown』を全曲演奏する構成だった。
このアルバムはPortishead的な暗さや妖艶さ、トリップホップの重たさとは少し違う質感を持っている。どちらかというとカントリーやフォークに近い雰囲気をまとっていて、それでいて要所にトリップホップ的なサンプル音が入ってくる。Beth Gibbonsにしか作れないアルバム、という言い方が最も近い。
ライブではその世界観がそのまま再現されていた。音源で感じていた独特の質感が、ステージ上でも失われていなかった。
青い照明の中のステージ
青い照明を中心にした演出が印象的だった。
ステージの雰囲気を必要以上に作り込まず、音と声に集中できる空間だった。両脇のギタリストの演奏も魅力的で、Beth Gibbonsの声を引き立てる役割をしっかりと果たしていた。
1. Tell Me Who You Are Today
2. Burden Of Life
3. Floating On A Moment
4. Rewind
5. For Sale
6. Mysteries
7. Lost Changes
8. Oceans
9. Tom The Model
10. Beyond The Sun
11. Whispering Love
〜encore〜
12. Roads
13. Glory Box
14. Reaching Out
アンコール:「Roads」と「Glory Box」
イントロが鳴った瞬間、会場が一斉に反応した。
「Roads」「Glory Box」。Portisheadの代表曲が続けて披露される場面で、「ついに来た」「待ってました」という空気が会場全体に広がった。新作の落ち着いたムードとはまた別の、90年代の影をまとったサウンド。時代が変わってもまったく色褪せていない、という事実をこの夜あらためて確認した。

恥ずかしがり屋のロックスター
MCは2回ほどだったが、何を話していたかまでは歓声で聞き取れなかった。
ただ、仕草と表情から伝わってくるものがあった。いい意味で自然体で、気取らない。恥ずかしがり屋なのかなと思わせる仕草が可愛らしかった。ステージ上での佇まいと、MCの時の柔らかい雰囲気のギャップが、その場の特別な温度感を作っていたと思う。
浄化された夜
ライブが終わった直後、疲れた、良かった、という感覚が同時にあった。
ロックミュージックのような盛り上がりやストレス発散とは違う。浄化された、という表現が最も近い。Beth Gibbonsの声が持つ力を、改めて強く実感した夜だった。
Portisheadとしての来日をずっと待ちながら、その機会がないままここまで来た。今回のライブは、それでも「やっと観られた」と言える体験として残る。そして次はPortisheadでの来日を、期待せずにはいられない。

