【文字起こし】#003 シネマランキング2025【CULATIVE RADO 手前のカルチャー】

【文字起こし】#003 シネマランキング2025【CULATIVE RADO 手前のカルチャー】

番組オープニングと企画説明

は)というわけで始まりました。CULATIVE RADIO「手前のカルチャー」。

この番組は、映画、音楽、アニメ、漫画など、カルチャーをもっと知りたいけど、どこから触れればいいかわからないという方に向けて、カルチャーをもっと身近に感じるための“入り口の手前”までご案内していく番組です。

私がCULATIVE編集室のはっしーこと、橋本拓哉です。

上)カルチャーの手前といえば、私、上水優輝です。よろしくお願いします。

は)よろしくお願いします。そうだ、メリークリスマスですね。

上)収録日はクリスマスですね。

は)聴いている方は、あけましておめでとうございますになっているかもしれません。

上)年末にクリスマスって言ってるのに、配信ではあけましておめでとうございますって、だいぶわけわからないですね。

は)ジョン・レノンの状態ですね。

は)2025年も終わりということで、今回のテーマは「手前のカルチャー シネマランキング2025」です。

今年観た映画を、ランキング形式、もしくはピックアップして紹介していきたいと思います。

これは、某ラッパーで映画評論家、ラジオDJの宇多丸さんが毎年やっている企画があるんですが、形式は特に縛らず、自由にやろうと思っています。

上)その番組を聴いていないので、完全にオリジナルで勝手にやりますけど大丈夫ですか?うまいこと調整してください。

は)大丈夫です。じゃあまずは優輝さんのランキングからいきましょう。

上水優輝のランキング

上)今回2025年ということで、僕は「観たあとに語り合える映画」を基準に選びました。

毎月、映画感想を語る会をやっていて、僕自身は映画に詳しいわけではないので、参加者の方が選んでくれた映画を課題として観て、一緒に語るということを続けています。

毎月1本なので、年間で12本。

それ以外にも映画館で観たものを含めて、20本以上は観ていると思います。

基準としては、語ったことでさらに深みが増した映画、スルメのように何度でも語れそうな映画ですね。

第3位:アフターサン

上)第3位は『アフターサン』です。

映画感想会でも観ましたし、それより前にバンドのメンバーとも話題にしていた作品です。

11歳の娘が、離れて暮らす父親とトルコ旅行に行く。

その夏の記憶を、20年後の娘ソフィーが振り返っていく構成になっています。

映像や記憶、回想が入り混じっていて、父親がどういう人だったのか、あの頃の自分は何を感じていたのかを、20年後の視点で再発見していく映画です。

解釈が本当に分かれる映画で、「あのシーンはこういう意味じゃないか」「あの時、父親はこういう状態だったんじゃないか」と、参加者の間でも意見が割れました。

でも、その割れる感じがすごく良くて、観た時よりも、語った後の方が圧倒的に味わいが深くなった映画でした。

は)印象的だったのは、娘が寝たあと、ベランダでタバコを吸うシーンですね。

言葉がなくて、暗くて、表情もよく見えない。動きだけで感じ取るしかない。

疲れている感じ、けだるさみたいなものが、映像だけで伝わってくる。

上)鏡に唾を吐きかけるシーンとかも意味深ですよね。

語り合っていくと、あの辺りが転機だったんじゃないか、みたいな話にもなって。

全然違う見方をみんながしているのが面白かったですね。

第2位:ナミビアの砂漠

上)第2位は『ナミビアの砂漠』です。

21歳の主人公の女性が、恋人を替え、感情を爆発させ、時には奇行とも取れる行動をしていく姿を描いた作品です。

正直、最初は「何を見せられているんだろう」という感覚が強かったです。

ただ、感想会で話を聞いていくと、「これは私のことを描いている」と強く共感する人もいて、自分とは全く違う景色を見ているんだなと感じました。

男性目線では理解しづらい部分も多いですが、他人の意見を聞いていくうちに、「確かに、そういうことなのかもしれない」と納得させられる場面も多かったです。

世代感、都市の若者の空気感など、自分からは距離のある世界を、語ることで少しずつ再解釈できた映画でした。

は)見終わったあと、「この映画は何だったんだろう」となるタイプですよね。

大きな事件が起こるわけでもなく、淡々と進んでいく。

でも、引っかかるシーンが多くて、いい意味でストレスが残る。

上)観る人によって、不快に感じるポイントが全然違う映画だと思います。

だからこそ、語ると面白い。

第1位:ドッグヴィル

上)第1位は『ドッグヴィル』です。

20年以上前の作品ですが、今年観て一番語りがいがありました。

ギャングに追われた女性が、小さな村に逃げ込み、かくまってもらう代わりに無償で働くことになる。

最初は善意だったはずの村人たちが、次第に本性を露わにしていくという物語です。

は)撮影手法が独特ですよね。

壁のないスタジオに、チョークで家や部屋の線だけが描かれている。

上)何も隠せない状態で人間関係だけが剥き出しになる。

その演出が、物語と完全に噛み合っていると思いました。

人間のいやらしさ、善悪とは何か、答えの出ない議論を延々と続けられる映画です。

感想会では、自分が重要だと思っていたポイントが、他の人には全然刺さっていなかったのも印象的でした。

それも含めて、語ることで面白さが増す映画でしたね。

上水優輝のランキング総括

は)3本とも、観終わったあとに爽快感がないですね。

上)全部、一回気持ちが暗くなる映画ですね。

は)でも、この3本でどんな映画が好きかはよくわかります。

上)かなり出てますね。

橋本拓哉のランキング

は)引き続き私のランキングです。今年は映画を全部で65本観て、うち劇場鑑賞が26本でした(ミニシアターの特集上映も含む)。最近は昔の作品を上映している館も多くて、それも良いなと思っています。

は)ただ例年は100〜200本くらい観ていたので、本数としてはかなり減りました。引っ越しをして映画館から遠くなって、距離的に足が重くなったのが大きいです。以前は徒歩で行けるくらい近かったので。

上)海の見える素敵なところに引っ越したんですよね。

は)というわけで、今年日本で公開された作品を中心に、観た中からベスト10を選びます。数が多いのでテンポよくいきます。

上)はい。

は)10位から4位まで一気にいきます。

上)はいはいはい。

は)第10位『MaXXXine マキシーン』、第9位『ウィキッド ふたりの魔女』、第8位『ボディビルダー』、第7位『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』、第6位『ANORA アノーラ』、第5位『ミッキー17』、第4位『JUNK WORLD(ジャンクワールド)』です。

上)うん。

は)以上、7作品ですね。

上)これ、聴いてる人もみんなわかるんですか?

は)どうなんですかね。でも、そこまでマニアックという感じではないと思います。

上)普通に映画館に行ってたら、わかるくらいなんじゃないですかね。10位から紹介お願いします。

10位『MaXXXine マキシーン』

は)第10位『MaXXXine マキシーン』。監督はタイ・ウェスト、主演はミア・ゴス。ジャンルはクライムサスペンス寄りですね。舞台は1980年代のハリウッド。ポルノ女優として人気を得た女優志望の主人公マキシーンが、新作ホラー映画の主役の座を掴みます。

は)スターへの夢を実現させようとする矢先、ハリウッドで連続殺人事件が起きて、周囲の仲間が次々と殺害されていく。そこでマキシーンがどう動くか、という話です。

は)これは『X エックス』『Pearl パール』に続く三部作の完結編です。1作目が80年代ホラーのリブート的な『X』、2作目がその前日譚の『パール』。そして今作が3作目で、『X』で生き残ったマキシーンが主人公になります。映画内の事件を知る“何者か”が近づいてきて、それが露見するとスターへの夢が潰える。そこでどうするか、という構図です。

上)イーロン・マスクじゃないんですね。

上)イーロン・マスクではない。

は)三部作を通して、80年代ハリウッドの男尊女卑的な空気の中で虐げられてきた女性、ハリウッド批判みたいな裏テーマがあるのが面白い。単発でも楽しめるけど、前作の文脈を引き継いだ方がより面白いと思います。ちゃんと完結して良かったな、という意味で10位に入れました。

上)これくらいの感じで紹介してくれると、普通に「こんな映画があるんだ」って興味持てるね。

9位『ウィキッド ふたりの魔女』

は)第9位『ウィキッド ふたりの魔女』。監督はジョン・M・チュウ、主演はシンシア・エリヴォとアリアナ・グランデ。ジャンルはミュージカルです。『オズの魔法使い』の前日譚で、もともとブロードウェイミュージカル『ウィキッド』の映画化ですね。

上)映画館で予告だけ見た。

は)『オズの魔法使い』は観たことあります?

上)ないです。

は)西の悪い魔女エルファバと、善い魔女グリンダという二人の魔女が出てきます。『オズの魔法使い』では西の悪い魔女を倒す話なんですけど、これはその二人がどうやって生まれたか、出会いから始まる物語です。

は)オズの国の大学で学生として出会う二人。エルファバは肌が緑で誤解されがちで内向的、グリンダは人気者。最初は衝突するけど、ルームメイトになって友情を深めていく。ただ、その友情が今後のオズの運命を大きく変えていく、という話です。

は)アカデミー賞やゴールデングローブ賞など多くノミネートされて、美術賞や衣装デザイン賞も獲得している作品です。

上)映像的にも美しい感じ?

は)映画的スケールでブロードウェイのミュージカルを再構築していて、楽曲とダンスが圧巻です。ストーリーは普遍的でわかりやすいからこそ良いし、善悪の二極化を崩すところがある。「どっちが善で悪か」ではない。

は)ミュージカルが苦手な人も多いと思うけど、そういう人にこそ観てほしいですね。

上)僕、苦手だから、ミュージカルって聞いた瞬間ちょっと話半分になったけど。

は)今回、ミュージカルシーンが進化したなという感じがありました。「今こんなすごいんだ」と思える。良かったです。

上)要チェックですね。

は)これ、前編後編で、後編が2026年に公開されます。

上)前編後編なんだ。じゃあこれを観ていくと良いですね。

は)良いですね。

8位『ボディビルダー』

は)第8位『ボディビルダー』。監督はイライジャ・バイナム、主演はジョナサン・メジャース。ジャンルはヒューマンドラマで、犯罪スリラーの要素もあります。

は)アメリカの田舎町で病気の祖父と二人暮らしの主人公キリアンが、一流のボディビルダーになって雑誌の表紙を飾る夢を見ている。でも友人も恋人もおらず孤独で、その孤独から過酷なトレーニングと食事制限にのめり込む。肉体が完成していくのと反比例して、精神は崩壊していく、という話です。

上)素直に出てくると、言っちゃまずいんですよね。

は)そこが肝ですね。評判としては『タクシードライバー』や『ジョーカー』の系譜と言われている。ただ個人的には、社会が形成した“無敵の人”というより、家庭の問題や個人の弱さなど、より個人的な問題として感じるシーンもありました。

上)タイトルでもうちょっと分かるようにしてほしいよね。スポーツものに見える。

は)そう、スポーツものっぽく見えますよね。でも、あそこまで自分を痛めつけるには一種の狂気が必要だと思うし、映像の撮り方もすごい。肉体美が、ある瞬間に恐怖に転じる演出がある。

は)主演のジョナサン・メジャースは本当に肉体改造して挑んでいて、もはや映画じゃないというか、現実が混ざってくる感じがある。努力が報われる、救いになる、みたいな構造を否定しているようにも見える。

は)原題は『Magazine Dreams』で、「雑誌の表紙を夢見る」みたいな意味合いですね。おすすめです。

上)面白そう。観終わった後ちょっと「うっ…」ってなる感じ?

は)そうですね。

上)今のところ3つの中だと、一番アンテナ立ったかも。

7位『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』

は)第7位『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』。監督はジェームズ・マンゴールド、主演はティモシー・シャラメ。ジャンルは伝記です。若き日のボブ・ディランを描く映画ですね。

は)無名の状態でニューヨークに降り立ったディランが成功していく中で、米ソ冷戦、キューバ危機、公民権運動、ベトナム戦争など時代が悪化していく。もともとフォークで恋愛の歌を歌っていて、客もそれを求めていたけど、「これでいいのか」となって、批判的でメッセージ性の高い歌詞を書いていく。

は)実際にあった有名な出来事として、観客から「嘘つき」と罵られたディランが「嘘つきはお前らだ」と返すシーンも描かれます。アカデミー賞でも作品賞にノミネートされています。

は)どこまで描くのか気になっていたんですけど、かなり若い時期までで終わる。だから「この後どうなっちゃうんだろう、ボブ・ディランは?」という余韻が残る終わり方です。

は)ディランを“天才”として神格化するというより、時代に揺れる若者としてフォーカスしているのが良かった。あと、劇中のディランの楽曲をティモシー・シャラメが実際に歌っていて、それが圧倒的に似てる。聴き比べても分からないくらい。コロナ禍で撮影できない期間に家でずっとディラン研究して練習していたらしいです。

上)役者魂だね。

は)役者魂ですね。

上)ボブ・ディラン、ちゃんと取り扱ってほしい。なぜ偉大とされているのか、深掘りしてほしい。

は)文学賞も取りましたしね。英語ネイティブでも分からないくらい詩的らしいです。僕らは一生かかっても、ディランが本当に書きたい詩の意味は理解できないかもしれない。

上)面白い。

は)ぜひボブ・ディラン回をやりたいですね。というわけで第7位でした。

6位『ANORA アノーラ』

は)第6位『ANORA アノーラ』。監督はショーン・ベイカー、主演はマイキー・マディソン。ジャンルとしては恋愛というよりヒューマンドラマ寄りです。

は)ニューヨークの若いストリッパーのアノーラが、クラブでロシア人の御曹司イヴァン(※文字起こし上は「アニー」)と出会って、ロシアに帰るまで契約彼女として雇われる。御曹司なので贅沢三昧になり、衝動的にラスベガスで結婚する。

は)ところが両親が「娼婦と結婚なんてありえない」と猛反発して部下を送り込み、御曹司は逃げる。アノーラと部下二人で御曹司を探す、というドタバタが起きる。

は)前半は「貧しい女の子が金持ちに見初められて駆け上がる」シンデレラストーリーなんだけど、後半から現実の残酷さに崩壊していく。去年のアカデミー賞で作品賞を受賞していて、カンヌでも最高賞。主演のマイキー・マディソンの演技がすごいと評価されています。

は)身分違いの恋という古典を、現代風にリアルに描く。脚本や編集など、見せ方がとにかく上手くて、一瞬で終わる感じがある。

上)退屈しなさそう。ずっと展開がありそう。

は)恋愛ものとして観ない方がいいかもしれない。どっちかというと犯罪もの、事件ものの感触がある。

上)暗いものとは思えないタイトルだけど。

は)観終わった後に結構くる。女性の立場の弱さを描いた作品で、男性女性で感想が変わるかもしれないですね。

5位『ミッキー17』

は)第5位『ミッキー17』。ディズニーのミッキーではないです。監督は『パラサイト 半地下の家族』や『グエムル』のポン・ジュノ。主演はロバート・パティンソンで、最近だと『バットマン』をやった人ですね。ジャンルはSFブラックコメディです。

は)あらすじからぶっ飛んでるんですけど、使い捨て人間として契約してしまった主人公ミッキーが、宇宙開拓の中で「何度死んでも生き返る」契約をする。記憶を引き継いで何度も生まれ変われる。

上)もう意味わかんない。

は)死んだら次のミッキーが出てくる。記憶は引き継がれる。でも手違いで、自分が二人存在する状態になってしまう。本来は死んで次が出てくるのに、死んでいないのに次が出てきて、ミッキーが二人いる。それで権力者に反撃に出る、という話です。

上)ミッキーとミッキー。

は)ブラックコメディなので笑えるんですけど、めっちゃ怖い。ブラックユーモア満載でポン・ジュノらしく社会批判もてんこ盛り。クローン問題、アイデンティティの所在、人体実験、未開の星への侵略、階級制度。何と言っていいか分からない感じの映画です。

上)笑えるんですか?

は)笑えます。ただ、笑っていいのかなと思う。

上)笑ってはいけないけど笑っちゃう、みたいな。

は)そんな感じです。

は)ここまで挙げた中だと、上水さんには『ミッキー17』か『ボディビルダー』が刺さりそうですね。

上)『ボディビルダー』は説明で刺さりました。一番興味ある。

4位『JUNK WORLD(ジャンクワールド)』

は)第4位『JUNK WORLD(ジャンクワールド)』。監督は堀貴秀さん。ストップモーションアニメです。前作『JUNK HEAD』のはるか昔、何百年、何千年前を描く作品ですね。

上)『JUNK HEAD』の続き?

は)その通りです。世界はディストピアで、人類が開発を進める中、労働力として人工生命体マリガンを創造する。マリガンはクローンで増殖して人類に反乱を起こし、地上は人類、地下はマリガンで支配が分かれる。

は)地下世界で異変が起き、人類とマリガンの共同調査チームが派遣されるが、道中でマリガンのカルト教団に襲撃される。隊長の女性トリスを守るために、主人公ロボットのロビンが作戦に乗り出す、という話です。

は)この作品が本当にすごいのは、堀貴秀さんが前作『JUNK HEAD』を独学で7年かけて制作しているところ。原案、絵コンテ、脚本、編集、撮影、演出、照明、アニメーター、デザイン、人形制作、セット、衣装、映像効果まで全部一人でやっているそうです。

上)やばいね。

は)前作の世界観が圧倒的に新しくてすごかったので、そこで仲間や出資が集まって作れたのが今作『JUNK WORLD』という感じです。ただ前作が良すぎた分、2作目でどう更新するかはハードルが高い。

上)ハードル高いよね。

は)でも世界観はそのままに、ストーリーが面白くなっている。いわゆるループものなんです。くだらなさも増えているけど、壮大さも増していて、時空を超える。スターウォーズ的に、もう1個の世界を作っている感じがある。

は)万人が観ても面白いと思います。

上)『JUNK HEAD』も観れてないから、セットで観たい。

は)全3部作で、3作目もたぶん制作に入ったかどうか、という段階です。全部出来てからでもいいかもしれないけど、おすすめです。

は)というわけで、10位から4位でした。

ここまでのまとめ

上)最初ざっと聞いたときは何言ってんだろうと思ったけど、1個ずつ聞いていくと、それぞれ魅力的な作品だなと思いました。

は)興味持ってきました?

上)最初、10位から4位まで一気に言ったときは一番興味なかったのが『ボディビルダー』だったけど、今一番興味あるのが『ボディビルダー』。

は)『ボディビルダー』は12月公開なので、まだ映画館でやってます。

上)最近の映画なんだ。

は)めちゃくちゃ最近。収録の1週間前くらいに観て、「これはすごい」となってランキングに入れました。

上)ランキングに突然入ってくるの、相当動かされたんだね。

は)良かったですね。

トップ3の発表へ

は)では、トップ3の発表です。

上)お願いします。

は)1個ずついきます。

上)1作ずつ。うん。

3位『エディントンへようこそ』:現代の分断を「嫌な感じ」のまま映像化する

は)第3位『エディントンへようこそ』。監督はアリ・アスター。『ミッドサマー』や『ボーはおそれている』の監督ですね。主演はホアキン・フェニックスで、『ボーはおそれている』に続いての起用です。

は)ジャンルはブラックコメディと言いたいけど、ジャンルがないというか、「アリ・アスター」って感じです。

は)舞台はニューメキシコの架空の小さな町「エディントン」。時代は2019年頃で、コロナ禍で町の人々が隔離生活をしている。主人公は町の保安官ジョー。市長と「マスクをつけるか、つけないか」で小競り合いから対立していて、保安官ジョーが突然、市長選に立候補するんです。そこから火種が周囲にどんどん広がって、取り返しのつかない事態になっていく。

は)劇中ずっと嫌な感じなんですよ。一応、扱ってるテーマをメモしてきたんですけど、SNS、集団圧力、レッテル貼り、フェイクニュースと炎上、陰謀論、カルト宗教、人種差別、ブラック・ライブズ・マターなど、現代の社会問題が盛りだくさん。

は)SNSで、全員が「自分が正義」だと思ってるところの弾圧とか分断を映像化した、と言っても面白い。だから誰にも感情移入できない。全員嫌なところがあるけど、全員が自分を正しいと思ってる。

は)結構難解で、表面上のストーリーは分かりやすいんですけど、裏テーマがあるんじゃないかと思わせる。観終わった後もずんとくるし、「どういうことだろう」って考えるんですけど、パンフレットに衝撃の言葉が書いてあって。

は)「結局それって、どういうことなんだろうって考察して、“こういうことじゃないか”って考える行為自体が、陰謀論に見えてるよね」みたいなことが書いてあって、もうアリ・アスターの掌で踊らされてるな、と。

上)なるほどな。

上)その行為自体を腐ってる、みたいな。

上)いいですね。結構好きかも。

は)観てみていいと思います。12月12日に公開されたばかりなので、おそらくまだやってると思います。

上)はいはい。

は)第3位『エディントンへようこそ』でした。

2位『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』:映画の原点としての「超アナログ」アクション

は)では第2位。『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』。監督はクリストファー・マッカリー、主演はトム・クルーズ。アクション超大作です。

上)やってたんですね。

は)そうなんです。シリーズおそらく最後の作品で、全8作の最高傑作だと思います。

上)今までファイナルとか言わなかったんですか。偉いね。

は)トム・クルーズも年ですからね。

上)だいぶ。

は)あらすじは、スパイ組織に所属する主人公イーサン・ハントが、人類を抹殺しようとするAIが核を落とそうとするのを阻止するために動く、という話です。

上)AIを不正にアクション起こしてもダメでしょうよ。

は)AIを止める鍵を手に入れるために、何を手に入れて、何を手に入れて…という話でもあります。ミッション:インポッシブルの「最後」という前提があって、前作までの積み重ねも含めて2位という感じですね。

上)単体で見ても2位にはならないけど、積み重ねがある。

は)そうです。ミッション:インポッシブルをよく知らない人に向けて説明すると、特に3作目か4作目以降は、トム・クルーズが自らプロデューサーになって、スタントアクションを全部自分でやってるんですよね。

上)そう。

は)なぜ自分がプロデューサーなのかというと、他の人がプロデューサーだったら止められるから。自分でアクションするために、自分でプロデューサーになってる。

上)インポッシブルするために。

は)最近だと『トップガン マーヴェリック』もそうですけど、他作品で培ってきたものをアウトプットする場がミッション:インポッシブルなんです。別の映画で「こういう映像面白いぞ」と思ったら、ミッション:インポッシブルでアップデートしてやる。良かったクルーをスカウトしてきてシリーズに入れる、みたいな。撮影のチームワークもすごい。

上)よく分かんないけどね。

は)今ってCG全盛期で、「CGだよね」となることが多いけど、ミッション:インポッシブルはスタントの見せ場ではほぼCGを使ってない。超アナログで、昔ながらの手法。だから「これどうやって撮ってんだろう」というシーンが満載です。

は)全作通してストーリーは結構二の次で、「どれだけ面白い映像を撮れるか」にフォーカスしている。

上)ミッション:インポッシブルだからね。どれだけインポッシブルなことをやってるか。

は)前作だと、崖からバイクで飛び降りる、みたいなアイデアが最初にあって、「それをやるにはどういうストーリーなら成立するか」を逆算してる。

上)映画どころじゃないね。見せ場から逆算してる。

は)そうそう。

は)スタントの歴史って映画の歴史と関わりが深い。もともと映画はアクションを撮る側面が強かったのが、だんだん文学的な要素が強くなって、考えさせる映画やメッセージ性のある映画が増えてきた。でも、その原点の「エンターテインメント映画」を突き詰めたのがトム・クルーズなんですよ。トム・クルーズの映画がすごく伝わってくる作品でした。

上)なるほどね。

は)この映画、ずっとびっくりします。

上)凄いなっていう。

上)タイトルに忠実ですね。

は)普通は「ここでカット入れて安全策やってるんだろうな」と思うけど、これは本当にやってる。いちばん有名なのは、飛行中の飛行機から飛行機に飛び移るシーンで、それを本当にやる。

上)プロデューサーなら絶対止める。

は)カメラの技術が進歩して小型化できて、飛行機に付けられるようになったから、やっと撮れるようになった、というのもあると思う。そこから逆算してる部分はある。でも、それでも実際にやってる。

上)何しとん。

は)風で顔が決してイケメンじゃない顔になる。肉がバーってなる。そういう「本当の風」みたいな生々しさも含めて、びっくりする。

上)ありがとうトム・クルーズ。でも「本当にやってる」ってのは、観てて分かるし迫ってくるものがありますよね。70年代映画とかもCGがしょぼいからリアルでやっちゃう、火をつけるとか建物燃やすとか、生々しさが迫ってくる。

は)そうですね。スタジオで撮る映画ももちろんいいけど、こういう映画は今後も残ってほしい。映画本来が持っているポテンシャルというか。アクション映画の現時点の最高傑作じゃないかなと思います。

上)アクションって、全てにおいて非効率だろうからね。

は)10年後、20年後にも「あの時ミッション:インポッシブルを映画館で観たな」ってなる作品だと思います。

上)はいはい。

1位『ワン・バトル・アフター・アナザー』:脚本・映像・音楽・演技の“四大要素”が揃った総合芸術

は)というわけで第1位です。いよいよ第1位、『ワン・バトル・アフター・アナザー』。

は)監督はポール・トーマス・アンダーソン。『ファントム・スレッド』などの監督ですね。主演はレオナルド・ディカプリオ。ジャンルはクライムアクション、ヒューマンドラマで、コメディ要素もある、という感じです。

は)あらすじは、冴えない元革命家の主人公ボブ(ディカプリオ)が、一人娘ヴィラがある理由で命を狙われることになる。娘を助けるために、元革命家のディカプリオが右往左往しながら戦っていく、人間群像劇みたいな作品です。

は)なぜ1位に選んだかというと、脚本、映像、音楽、演技がすべて素晴らしくて完璧だと思ったから。映画って総合芸術と言われますけど、自分の中ではこの4つ、脚本・映像・音楽・演技が“四大要素”で、そこに「自分に合うか」「社会性があるか」「時代に沿っているか」みたいなものを足して評価してます。

は)この映画は、その4つを完全に押さえているし、単純に面白い。音楽がジョニー・グリーンウッドなんですよね。

上)はい。

は)それも良かったし、元々“王子様キャラ”のディカプリオが、ここまで情けないおっさんの演技ができてるのがすごい。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でも情けない役はやってたけど、その系譜としてさらに良い。

上)情けないおっさんでしたね。

は)ディカプリオがとにかくいいし、登場人物全員キャラが立ってる。ジョーク具合や各キャラの強さはタランティーノ的というか、『パルプ・フィクション』を彷彿とさせる感じもある。

上)確かに印象的なキャラが多いですね。

は)クライマックスのカーチェイスが、追われる、さらに追われる、という構造で新しい。追われるまではよくあるけど、もう一段ある。道路がくねくねした坂道でアップダウンがあって、追ってる車が見えなくなったり、上がってきて見えたりする。あの撮影は「ありそうでなかった」感じで、古き良きミニシアター感もある。非の打ちどころがない映画だと思いました。

は)テーマとして白人至上主義や人種差別も扱いつつ、古典的な復讐劇でもある。観終わった後に「今年ベストワンかも」と思ったのが、そのまま1位になった感じです。

上)なるほどね。

上)結構こういう映画が好きなんですね。

は)そうですね。こういう映画を観て良かったな、ってなりますね。『ワン・バトル・アフター・アナザー』でした。

上)観ましたよ。今日話を聞いてて思ったのは、映画に「映画っぽさ」を求めていないんだ、ということかもしれない。どれくらい自分の認知を揺さぶってくれたか、考えさせられたか、そこに評価軸が寄ってるなと思いました。評価基準が狭い。

は)でも、それも1個の軸として大事ですよね。今年は『ワン・バトル・アフター・アナザー』の年でしたね。

上)そうですか。

番外編『ザ・ライフ・オブ・チャック』:未公開作を機内で観た

は)ちなみに番外編でもう1本あって、『ザ・ライフ・オブ・チャック』という映画があります。これはまだ日本で公開されてないです。監督はマイク・フラナガンで、『ドクター・スリープ』を撮った人。主演はトム・ヒドルストン。ジャンルはSF、ヒューマンドラマ、サスペンスという感じです。

は)日本未公開なんですけど、飛行機の機内で観ました。スティーヴン・キング原作で、世にも奇妙な物語的な不思議な話です。3部構成で時間を逆行しながら物語が進むんですけど、第3章から始まる。

上)はいはい。

は)第3章では気候変動やネット・電気が急に停止したりして世界が崩壊していく、崩壊寸前の世界を描く。教師のマーティが、町中のテレビや広告で「サンキュー、チャック」という謎めいた広告を見る。町の人に聞いても、誰もチャックが誰か知らない。

は)「チャックとは誰なのか」を匂わせつつ世界が終わっていく様子を体感するのが第3章。第2章でチャックが登場して、真面目な銀行員チャックの人生を描く。第1章がチャックの少年時代。そういう一人の男の人生を追った人生映画です。

は)構造もすごく良いし、途中にダンスシーンがあるんですけど、それがすごく映画的で良かった。『(500)日のサマー』を彷彿とさせるような、映画の合間に差し込まれるダンスシーンの中でも特に良いと思った。

上)3章から逆行していくのも面白いですね。人生が逆回転していく感じ。

は)そうすると「世界の崩壊とは何なのか」みたいなことも考えるし、「サンキュー、チャック」の意味もだんだん分かってくる。たぶん2026年か2027年くらいには日本でも公開されるんじゃないかなと思います。機会があれば、今年観た中ではすごく良かった映画です。

は)番外編は『ザ・ライフ・オブ・チャック』でした。という感じで映画ランキングをお送りしました。

まとめ:ランキングは「その人の個性」が出る

上)いいですね。まとめて聞くと「観たいもの」も出てくるし、何が気になったかで個性が出ると思う。『ボディビルダー』が全然刺さらない人もいると思うし。

は)『ウィキッド』みたいな。

上)うん。『ボディビルダー』と『エディントン』観たいなって思いました。特に。

上)はいはい。満足だね。うん。

は)なかなか面白かったです。

は)来年、今年はいっぱい映画を観たいと思います。いろいろ紹介できればと思います。映画って本当にいいものですね。

上)怒られるよ。それではまた。ありがとうございました。

は)ありがとうございました。

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