
【映画レビュー】トロン:アレス
映画館で最大化される、ディズニー製ハードSF体験。
ディズニーが本気で作るSFとして発表時から注目されていた『トロン:アレス』。
音楽を手がけるのは ナイン・インチ・ネイルズ だ。
前作『トロン:レガシー』のDAFT PUNKとは異なり、よりノイズ感のある、デジタルと人間性が交錯するサウンドへの期待も大きかった。
実際に観終えてみると本作は映画館という環境でこそ成立するタイプのSF映画だった。
作品概要
監督:ヨアヒム・ローニング
脚本:ジェシー・ウィガトウ
出演:ジャレッド・レト、グレタ・リー、ほか
音楽:ナイン・インチ・ネイルズ
ジャンル:SF/アクション
シリーズ:『トロン』シリーズ第3作
(C)2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
あらすじ
デジタル世界と現実世界の境界が曖昧になりつつある近未来。
“アレス”と呼ばれる存在を軸に、AIと人間の関係性、そして両者の衝突が描かれていく。
シリーズが一貫して扱ってきた「人間とプログラムの関係」を、より現代的な視点でアップデートした物語。
前作を観ていると、楽しめるポイントやニヤリとする演出も多い。
まずは映像体験としての強度
本作を語るうえで、映像表現は避けて通れない。
特に印象的なのは、夜の黒と赤いライトのコントラスト。
グリッド世界のアップデートではなく、まったく別の質感を持ったサイバー空間として再構築されていた印象だ。
これは間違いなく、映画館で観ることで価値が跳ね上がるシーンだった。
中でも印象的だったのが、「29分間」というタイムリミットが設定された戦闘シーン。
光の配置、奥行きの使い方、カメラワーク。
どれもが噛み合い、時間制限そのものが演出として機能していた。
テーマと音楽が噛み合う瞬間
本作のテーマは、明確にAIと人間の共存にある。
そのテーマを、最も雄弁に語っていたのがナイン・インチ・ネイルズの音楽だった。
DAFT PUNKの完璧に整えられた電子音に対し、今回はノイズや歪みを含んだ、どこか「人間臭い」サウンド。
デジタルでありながら、完全に無機質ではない。
その感覚が、物語のテーマと完全にフィットしていた。
「これ以外ありえなかった」と思えるほどのハマり方だった。
まとめ
良かった点
- 黒×赤を基調とした圧倒的なビジュアル設計
- 映画館で観ることで真価を発揮するスケール感
- ナイン・インチ・ネイルズによる音楽とテーマの一致
- シリーズらしいスタイリッシュなSFアクションの進化
惜しい点
- ストーリーはやや単調で、踏み込み不足に感じる部分も
- 映像と音楽の完成度に比べると、物語の芯はやや弱い









