レディオヘッド入門|何から聴く?全9枚のアルバムとおすすめ曲
レディオヘッドはイギリス・オックスフォード出身の5人組。1985年に同じ高校に通う5人で組み、メンバーは一度も変わっていない。2027年6月、さいたまスーパーアリーナで5日間の単独公演が決まった。日本での単独公演は2008年以来、19年ぶり。
- オリジナルアルバムは1993年から2016年までの9枚。
- 1990年代はギター3本のロック、2000年代は電子音と打ち込み、2010年代はループとオーケストラ
- ロックから入るなら『The Bends』、代表作なら『OK Computer』、いまの耳で聴くなら『In Rainbows』
レディオヘッドはどんなバンドか
メンバーは、ボーカルのトム・ヨーク、リードギターのジョニー・グリーンウッド、ベースのコリン・グリーンウッド(ジョニーの兄)、ギターのエド・オブライエン、ドラムのフィル・セルウェイ。ギターが3本いる。2枚目からはナイジェル・ゴドリッチがエンジニアとして加わり、3枚目以降のアルバムはすべて彼がプロデュースしている。
アルバムを追えば、歴史をそのまま追えるバンドだ。1枚ごとに音が変わるので、どのアルバムが好きかで、聴き手の好みが分かれるバンドでもある。2019年にロックの殿堂入りを果たした。
「Creep」が最初はイギリスで売れなかったこと、『Kid A』でギターを手放した理由、『In Rainbows』を値段のない形で売った話は、Podcast で9枚を順に追いながら話している。
1990年代:ギター3本のロックバンドとして頂点へ
『Pablo Honey』(1993)
1枚目。1992年に、3週間ほどで録られた。
静かに始まり、サビの手前で歪んだギターが爆発する。同じ頃のアメリカのグランジと同じ型の、まっすぐなギターロック。ギターが3本いるバンドだが、音はまだ3、4人で鳴らせる範囲にとどまっている。
まず聴く曲:「Creep」「Anyone Can Play Guitar」
『The Bends』(1995)
2枚目。プロデュースはジョン・レッキー。のちに全作品を手がけるナイジェル・ゴドリッチが、エンジニアとして加わった。
ギター3本が重なって鳴る音を、初めて形にしたアルバム。激しいギターロックの曲と、アコースティックギターで静かに始まるバラードが交互に並ぶ。全英4位まで上がった。
まず聴く曲:「Fake Plastic Trees」「Just」「Street Spirit (Fade Out)」
『OK Computer』(1997)
3枚目。バース近郊の古い屋敷、セント・キャサリンズ・コートに機材を持ち込み、部屋ごとの響きを使い分けて録った。石の階段で歌を録った曲もある。8割ほどは、重ね録りをせずに一度で録っている。
バンドの編成に、エレクトリックピアノ、メロトロン、鉄琴、弦が加わる。ギターは、ギターらしい音ではなく、変わった音を出すために鳴らされるようになった。歌われるのは、テクノロジーに囲まれた暮らしの不安や疎外感。
全英1位、グラミー賞の最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバム。
まず聴く曲:「Paranoid Android」「Karma Police」「No Surprises」
2000年代:ギターを置いて、また手に取る
『Kid A』(2000)
4枚目。ギターはほとんど鳴らない。シンセ、ドラムマシン、ジョニー・グリーンウッドが弾く古い電子楽器オンド・マルトノ、管楽器、弦で組み立てられている。手本にしたのは、エイフェックス・ツインなどの電子音楽、ドイツのバンドのカン、チャールズ・ミンガスらのジャズ、それにビョーク。
トム・ヨークの声も機械で加工され、何を歌っているか聞き取れない曲が多い。歌詞は、言葉を切り刻んで並べ直すやり方で書かれた。
シングルもミュージックビデオも出さなかったが、バンドとして初めて全米1位を取った。
まず聴く曲:「Everything In Its Right Place」「The National Anthem」「Idioteque」
『Amnesiac』(2001)
5枚目。『Kid A』と同じ時期に録った20曲あまりのうち、残りの半分でできている。
材料は同じでも、響きは違う。電子音の冷たさが際立つ『Kid A』に対して、こちらはジャズや、ロックより古い音楽の気配が濃い。ハンフリー・リトルトンのジャズバンドが加わった「Life in a Glasshouse」は、ニューオーリンズのブルースのように終わる。ピアノと弦、バンドの演奏で聴かせる曲も多い。
まず聴く曲:「Pyramid Song」「I Might Be Wrong」
『Hail to the Thief』(2003)
6枚目。ロサンゼルスのスタジオで、2週間ほどでほとんどを録った。重ね録りより、バンドで一度に鳴らした演奏を優先している。
前の2枚の電子音は残したまま、生のドラムとギターとピアノが前に戻ってきた。トム・ヨークの声の加工も減っている。14曲56分で、9枚の中でいちばん長い。タイトルは2000年のアメリカ大統領選の混乱から取られ、政治色がいちばん強いアルバムでもある。
2025年には、この時期のライブ録音を集めた『Hail to the Thief (Live Recordings 2003–2009)』が出た。
まず聴く曲:「2 + 2 = 5」「There There」
『In Rainbows』(2007)
7枚目。2007年10月10日に、値段を買う人が決める形でダウンロード販売された。
電子音とバンドの演奏が溶け合い、9枚の中でいちばん音が温かい。5拍子の曲や、拍の頭がつかみにくい曲もあるが、メロディは聴きやすい。歌われるのは政治ではなく、死や、移ろっていくものといった身近な題材。
全英・全米とも1位、グラミー賞の最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバム。
まず聴く曲:「15 Step」「Weird Fishes/Arpeggi」
2010年代:ループとオーケストラ
『The King of Limbs』(2011)
8枚目。8曲37分で、9枚の中でいちばん短い。
主役は、歌よりもリズム。バンドの演奏を録って切り貼りし、ループさせて曲の土台を作った。切り貼りに使うソフトは、ジョニー・グリーンウッドが自分で書いている。トム・ヨークは、できあがったリズムの上に、あとからメロディと歌詞を乗せた。ダブステップの影響を指摘する批評も多い。ライブでは、この細かいリズムを再現するためにドラマーを2人にした。
まず聴く曲:「Bloom」「Lotus Flower」
「Lotus Flower」のミュージックビデオでは、帽子をかぶったトム・ヨークが白黒の画面でひたすら踊る。
『A Moon Shaped Pool』(2016)
9枚目。中心にあるのはピアノと、ジョニー・グリーンウッドが編曲した弦と合唱。演奏はロンドン・コンテンポラリー・オーケストラ。ギターロックのバンドの音より、オーケストラの響きが前に出る。
曲はアルファベット順に並ぶ。最後の「True Love Waits」は、1995年からライブで演奏してきた曲の、初めてのスタジオ録音。
まず聴く曲:「Burn the Witch」「True Love Waits」
休止の7年と、2025年の復活
2016年から2018年までのツアーのあと、レディオヘッドは休止を宣言しないまま活動を止めた。
そのあいだ、メンバーはそれぞれ外で活動していた。トム・ヨークとジョニー・グリーンウッドは、ドラムのトム・スキナーと3人で The Smile を組み、2021年から2024年までに3枚のアルバムを出した。トム・ヨークはソロのほか、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーらと Atoms for Peace でも活動している。
ジョニー・グリーンウッドは映画音楽の作曲家としても知られる。ポール・トーマス・アンダーソン監督とは『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』から組んでいて、2025年の『ワン・バトル・アフター・アナザー』も彼の音楽。日本の映画では『ノルウェイの森』の音楽を手がけた。
2025年11月、レディオヘッドは7年ぶりにライブを再開した。マドリード、ボローニャ、ロンドン、コペンハーゲン、ベルリンの5都市で4日ずつ、計20公演。ステージを客席が囲む形で、日ごとにセットリストを大きく入れ替えた。
2027年6月の日本公演は、8・9・11・12・13日の5日間。会場はさいたまスーパーアリーナ(GMOアリーナさいたま)。オーストラリアとあわせたツアーで、アジアでは日本だけ。
ロックから入るなら『The Bends』、代表作なら『OK Computer』
ギターロックから入るなら『The Bends』。ギター3本のバンドの音が、いちばんまっすぐ出ている。
代表作から聴くなら『OK Computer』。いまの耳で聴くなら『In Rainbows』。電子音とバンドの音が混ざった、後期のレディオヘッドの入口になる。




