ヨルゴス・ランティモス フィルモグラフィー|全作品ガイド
ヨルゴス・ランティモスの長編作品を年代順に並べた参照ガイド。各作品の基本情報と短評をまとめている。作家性の概要はコラム記事を参照。
『籠の中の乙女』(2009年)
監督 | ヨルゴス・ランティモス |
|---|---|
脚本 | ヨルゴス・ランティモス、エフティミス・フィリップ |
出演 | クリストス・ステルギオグル、ミシェル・ヴァレイ、アンゲリキ・パプーリア |
製作国 | ギリシャ |
上映時間 | 96分 |
受賞 | カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリ、アカデミー賞外国語映画賞ノミネート |
日本公開 | 2012年(2025年1月に4Kレストア版リバイバル公開) |
外の世界から完全に遮断されて育てられた子どもたちを描いた、ランティモスの代表作にして原点。両親が作り上げた「家の中だけの世界」は独自のルールで支配されており、言葉の意味すら書き換えられている。そこに外から一人の女性が持ち込まれたことで、均衡が崩れていく。家族という権力構造への問いがこれほど異形の形で描かれた映画はほとんどない。刺さる人には深く刺さる。R18+。
『ロブスター』(2015年)
監督 | ヨルゴス・ランティモス |
|---|---|
脚本 | ヨルゴス・ランティモス、エフティミス・フィリップ |
出演 | コリン・ファレル、レイチェル・ワイズ、レア・セドゥ |
製作国 | アイルランド・イギリス・ギリシャほか |
上映時間 | 118分 |
受賞 | カンヌ国際映画祭審査員賞、アカデミー賞脚本賞ノミネート |
日本公開 | 2016年 |
ランティモス初の英語作品。独身者は45日以内にパートナーを見つけなければ動物に変えられるという近未来ディストピアを舞台に、恋愛を強制する社会と、それを拒絶するコミュニティの双方を等しくおかしなものとして描く。「パートナーがいることを強いる社会」と「独身を貫くことを強いるコミュニティ」、どちらも自由ではないという皮肉が効いている。コリン・ファレルの無表情な演技がはまっている。
『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(2017年)
監督 | ヨルゴス・ランティモス |
|---|---|
脚本 | ヨルゴス・ランティモス、エフティミス・フィリップ |
出演 | コリン・ファレル、ニコル・キッドマン、バリー・コーガン |
製作国 | イギリス・アイルランド・アメリカ |
上映時間 | 121分 |
受賞 | カンヌ国際映画祭脚本賞 |
日本公開 | 2018年 |
著名な心臓外科医の家族に近づいてきた少年が、因果応報の呪いをかけていく。古代ギリシャ悲劇『アウリスのイピゲネイア』にインスピレーションを得た作品で、静謐な映像と不気味なスコアが不安を積み上げていく。バリー・コーガンの怪演が強烈。ランティモス作品の中では最も「怖い」寄りの一本。
『女王陛下のお気に入り』(2018年)
監督 | ヨルゴス・ランティモス |
|---|---|
脚本 | デボラ・デイヴィス、トニー・マクナマラ |
出演 | オリヴィア・コールマン、レイチェル・ワイズ、エマ・ストーン |
製作国 | アイルランド・イギリス |
上映時間 | 120分 |
受賞 | ヴェネツィア国際映画祭審査員大賞・主演女優賞、アカデミー賞10部門ノミネート(主演女優賞受賞) |
日本公開 | 2019年 |
18世紀イギリス宮廷を舞台に、病弱な女王アンをめぐって側近の二人の女性が熾烈な寵愛争いを繰り広げる。ランティモス作品の中で最も間口が広く、歴史劇としても楽しめる仕上がり。脚本は外部ライターとの協力で書かれており、物語として掴みやすい。オリヴィア・コールマンのアカデミー賞受賞はこの作品による。エマ・ストーンとの初タッグ作品でもある。
『哀れなるものたち』(2023年)
監督 | ヨルゴス・ランティモス |
|---|---|
脚本 | トニー・マクナマラ(原作:アラスター・グレイ) |
出演 | エマ・ストーン、マーク・ラファロ、ウィレム・デフォー |
製作国 | イギリス・アイルランド |
上映時間 | 141分 |
受賞 | ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞、アカデミー賞4部門受賞(主演女優賞・美術賞・衣装デザイン賞・メイクアップ&ヘアスタイリング賞) |
日本公開 | 2024年 |
胎児の脳を移植されて蘇った女性ベラが、世界を旅しながら自由と自己を獲得していく物語。ランティモスのキャリアの中で最もエンタメ性が高く、美術・衣装・映像のすべてが突出した完成度を持つ。初見の人にとっての入口として最適。エマ・ストーンはこの作品でアカデミー賞主演女優賞を受賞した。R18+。
『憐れみの3章』(2024年)
監督 | ヨルゴス・ランティモス |
|---|---|
脚本 | ヨルゴス・ランティモス、エフティミス・フィリップ |
出演 | ジェシー・プレモンス、エマ・ストーン、ウィレム・デフォー |
製作国 | イギリス・アイルランド・アメリカ |
上映時間 | 163分 |
受賞 | カンヌ国際映画祭男優賞(ジェシー・プレモンス) |
日本公開 | 2024年 |
3つの独立した物語を束ねたオムニバス形式の作品。ギリシャ時代の脚本パートナー、エフティミス・フィリップとの再タッグで、『哀れなるものたち』より以前の、より乾いたランティモス色が強い。支配と服従、アイデンティティの喪失というテーマを三様に描く。上映時間は163分と長め。
『ブゴニア』(2026年)
監督 | ヨルゴス・ランティモス |
|---|---|
製作 | ヨルゴス・ランティモス、アリ・アスター |
出演 | エマ・ストーン、ジェシー・プレモンス、ポール・ダノ |
製作国 | アメリカ |
上映時間 | 118分 |
日本公開 | 2026年2月 |
韓国映画『地球を守れ!』(2003年)を原作に、アリ・アスターとのタッグで製作。宇宙人を拉致したと思い込んだ男の物語で、陰謀論・都市伝説・信仰という「証明のしようがないもの」をめぐるテーマが現代社会と響き合う。VistaVisionというアナログのフィルム撮影方式を採用しており、映像美も見どころのひとつ。エンタメとしての完成度が高く、ランティモス入門作としても機能する。PG-12。
