映画『MaXXXine マキシーン』レビュー|三部作の完結が意味するもの、#MeTooをホラーに変えた野心作

映画『MaXXXine マキシーン』レビュー|三部作の完結が意味するもの、#MeTooをホラーに変えた野心作

この映画をひと言で言うと

女性の夢を食い物にしてきたハリウッドへの批評を、80年代サスペンスの衣をまとって描いた三部作の完結編。前2作を経て初めて全貌が見える、ミア・ゴスという女優の到達点でもある。

作品の背景・前情報

監督

タイ・ウェスト

脚本

タイ・ウェスト

出演

ミア・ゴス、エリザベス・デビッキ、ケビン・ベーコン、ジャンカルロ・エスポジト、ボビー・カナベイル、リリー・コリンズ、モーゼス・サムニー、ホールジー、ミシェル・モナハン

音楽

タイラー・ベイツ

ジャンル

クライムサスペンス/スラッシャーホラー

その他注目点

タイ・ウェスト監督&ミア・ゴス主演による「X エックス」(2022年)、「Pearl パール」(2022年)に続く三部作の完結編。舞台は1985年のハリウッド、実在の連続殺人犯「ナイト・ストーカー」が暗躍した時代と重ねて描かれる。

あらすじ

「X エックス」の事件から生き延びたポルノ女優マキシーン(ミア・ゴス)は、ハリウッドでの女優としての地位を確立しつつある。ホラー映画の主役の座をつかんだ矢先、彼女の暗い過去を知る何者かが近づいてくる。その正体が明らかになるにつれ、積み上げてきた夢そのものが脅かされていく。

三部作という設計が持つ意味

タイ・ウェストは最初の「X」を撮影しながら、すでに「Pearl」の脚本を書き上げていたという。「X」でミア・ゴスが演じたのはマキシーンとパールの二役だった。パールの前日譚を第2作で、マキシーンのその後を第3作で描くという三部作の構造は、最後まで観てはじめてその意図が腑に落ちる。

表層の設計はそれぞれ異なる。「X」は70年代の田舎ホラー、「Pearl」はハリウッド黄金期のメロドラマとファンタジー、そして「MaXXXine」は80年代ハリウッドのグラインドハウス的サスペンス。各作品が「ある時代の映画スタイルの再現」として機能しており、その一貫性が三部作に統一感を与えている。

共通して流れているテーマは、女性の夢がどのように搾取されてきたかということだ。映画産業における男尊女卑の構造、夢に乗じた支配。#MeToo運動を経た今、その告発をホラーの文法で描いているのが本シリーズの立ち位置だと思う。同じ問題を実際のワインスタイン事件を追って描いたドキュメンタリー的な映画『SHE SAID/その名を暴け』があるとすれば、「MaXXXine」はその事実を土台にして作られたホラーだという見方ができる。

映像と演出について

80年代のホラー映画が持っていたざらついた質感が、本作の映像には意識的に刻まれている。フィルムグレインを思わせるレトロな粗さ、ネオン看板が滲む夜のハリウッド。時代の再現というより、あの時代のホラーが持っていた「空気感」を再生しようとしている。

三部作を通して印象的なのは、エンドロールへの入り方だ。「Pearl」のラストに残るのは、ミア・ゴスの笑顔とも言いがたい笑顔のアップで延々と流れるエンドロールで、あの異様な引力はなかなか忘れられない。「MaXXXine」では生首でエンドロールに入る。

(ネタバレ注意)

文脈を知っていれば解放としても受け取れるが、単純にグロテスクでもある。このシリーズは終わり方のデザインに異常にこだわっていて、そこだけ見ても三部作としての一貫した意志を感じる。

ミア・ゴスについて

一人の女優が、老婆パールとポルノ女優マキシーンという正反対の人物を同じシリーズで演じ切り、さらに3作目ではマキシーンという人物の終着点まで連れて行く。演技の幅というより、役への没入の深さが際立つ。

「ちゃんと完結して良かった」という感想は、シリーズへの信頼が積み重なった末の言葉だと思う。3作を通じてずっとミア・ゴスとタイ・ウェストを追ってきた観客にとって、この着地は単なる完結以上の意味を持つ。

まとめ

単体でも面白くは観られるが、本作の評価は三部作として完結したことにある。タイ・ウェストとミア・ゴスが3作かけて積み上げてきたものがきちんと着地した、それだけで十分な達成だと思う。

これはホラーの刺激より、サスペンスとして、女優の物語として、ハリウッド批評として機能する作品だ。「X」「Pearl」の順に観てから臨んでほしい。

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