映画『ウィキッド 永遠の約束』レビュー|前作があって、はじめて完結する物語
前編『ウィキッド』で描かれた悪い魔女の誕生譚は、続編となる本作でいよいよ『オズの魔法使い』と接続される。ミュージカル映画として映像・音楽ともに一級品の仕上がりである一方、この一本だけで完結する作品ではない。前作を観ていることが、鑑賞の前提条件になる。
作品の背景・前情報
監督 | ジョン・M・チュウ |
|---|---|
脚本 | ウィニー・ホルズマン、ダナ・フォックス |
出演 | シンシア・エリヴォ、アリアナ・グランデ、ジョナサン・ベイリー、イーサン・スレイター、ジェフ・ゴールドブラム、ミシェル・ヨー |
ジャンル | ミュージカル / ファンタジー |
その他注目点 | 2003年初演のブロードウェイミュージカルを2部作で映画化。原作はグレゴリー・マグワイアの小説。前作『ウィキッド』(2024)の直接の続編。前作はアカデミー賞・ゴールデングローブ賞など多部門ノミネート、美術賞・衣装デザイン賞を受賞。 |
あらすじ | 「悪い魔女」として追われることになったエルファバと、「良い魔女」グリンダ。2人の選択と別れを描きながら、あの童話がいかに形成されていったかが明かされる。ライオン、ブリキのきこり、かかし。誰もが知るキャラクターたちとの接点も描かれ、物語は『オズの魔法使い』へと収束していく。 |
前作『ウィキッド』について
本作を語る前に、前作の話をしておく必要がある。
『オズの魔法使い』には、西の悪い魔女と善い魔女という2人のキャラクターが登場する。前作はその2人がどうやって生まれたか、出会いから描く物語だ。肌が緑で誤解されがちな内向的なエルファバと、人気者のグリンダ。オズの国の大学でルームメイトになり、反目しながら友情を深めていく。普遍的な学園ドラマとしての構造が、作品の骨格を支えている。
ミュージカルが苦手な人でも入りやすかった理由は、ここにある。楽曲のレベルの高さはもちろんだが、シンプルな人間関係のドラマが土台にあるため、ミュージカルという形式が障壁になりにくい。映画的スケールでブロードウェイミュージカルを再構築した映像の完成度も高く、アカデミー賞・ゴールデングローブ賞など多部門でノミネートされ、美術賞と衣装デザイン賞を受賞している。
善悪の二極化を崩すという視点も前作の核心だった。「どちらが善でどちらが悪か」ではなく、その問い自体を揺さぶる作品として機能していた。そのカタルシスが前作にはあった。
映像と音楽について
ドルビーシネマで観た甲斐のある作品だった。
色彩設計が際立っている。緑、ピンク、黄色、エメラルドグリーン。オズという国の視覚的な豊かさが画面の隅々まで行き渡っており、美術と衣装が音楽と同じ水準で設計されている。前作から一貫したこの色彩感覚は、本作でも健在だ。
音楽(スコア)の完成度も高い。ただ、前作の楽曲が持っていたキャッチーさと比べると、今作は印象がやや薄い。「前作よりずっと歌ってる感が薄い」という感覚があったが、曲数の問題ではなく、耳に残る楽曲の密度の違いかもしれない。個人的にはオズ繋がりとして、「Over the Rainbow」(1939年の映画『オズの魔法使い』の楽曲。「20世紀の歌」第1位にも選ばれた主題歌)のメロディでも使ってほしかった、という惜しさも残った。
物語の構造について
ライオン、ブリキのきこり、かかし、誰もが知るあのキャラクターたちとの接続は、純粋に面白い。『オズの魔法使い』を知っていれば知っているほど、その繋がり方に発見がある。
ただ、物語全体の印象としては「答え合わせ」に近い。どう着地するか、どう繋がるかを確認する作業が、鑑賞の主軸になりやすい。登場人物の行動原理が掴みにくい場面もあるが、童話ベースの世界観として許容できる範囲か。ドロシーの扱いは、少し可哀想な印象が残った。
前作と合わせて、完結する
2部作を通しての評価になる作品だという認識で観ると、しっくりくる。
前作が独立した物語として強度を持っていたのに対し、本作は前作ありきで機能する続編という側面が強い。前作のカタルシスを知っているからこそ、本作がそれを超えにくい構造になっている。それ自体は作品の欠陥ではなく、2部作という設計の必然か。
『オズの魔法使い』を知っていること、前作を観ていること。この2つが揃って初めて、作品の奥行きに触れられる。
ミュージカル映画の金字塔として長く残っていく作品になると思う。ただしその評価は、前作と合わせてのものになるだろう。
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