『ディスクロージャー・デイ』映画レビュー|開示のその先が見たかった
この映画をひと言で言うと
宇宙人の存在が全世界に開示される日を巡る、スティーヴン・スピルバーグのSF。宇宙人そのものよりも、その証拠を巡る追跡劇が前に出る。映画としては楽しいが、スピルバーグの宇宙人映画として観ると物足りなさが残った。
作品の背景・前情報
監督・原案 | スティーヴン・スピルバーグ |
|---|---|
脚本 | デヴィッド・コープ |
音楽 | ジョン・ウィリアムズ |
出演 | エミリー・ブラント、ジョシュ・オコナー、コリン・ファース、コールマン・ドミンゴ、イヴ・ヒューソン |
公開 | 2026年10月1日 |
上映時間 | 145分 |
あらすじ | 気象キャスターのマーガレットと、サイバーセキュリティーの専門家ダニエル。接点のなかった二人が、地球外生命に関する最高機密を知る。謎の協力者に導かれ、数十年にわたって隠されてきた秘密を全人類に明かそうとする二人の前に、隠蔽を続ける組織が立ちはだかる。 |
『フェイブルマンズ』で自身の半生を描いたスピルバーグが、その次に選んだのが宇宙人の話だった。『未知との遭遇』『E.T.』以来、久しぶりに宇宙人と人間の接触を正面から扱う作品になる。アメリカでは6月に公開されたが、日本では当初予定の7月から延期され、10月の公開になった。
公開前の Podcast では、本作を『E.T.』の系譜として話していた。E.T.は秘密裏に処理された。本作はその秘密が開示される側の話になる。
宇宙人を見に行ったら、スパイアクションだった
観る前に期待していたのは、もっと宇宙人が出てくる映画だった。「開示される日」というタイトルからは、宇宙人と人類の接触の歴史そのものを想像していた。
実際に観ると、SFよりもスパイアクションの印象が強い。宇宙人がいる証拠を巡って、追う者と追われる者が走り回る。そこに、宇宙人によって能力を授けられた者どうしが引き寄せ合っていく筋が重なる。後者はデヴィッド・クローネンバーグの『スキャナーズ』を思わせた。『ミッション:インポッシブル』や『インディ・ジョーンズ』と『スキャナーズ』を足して2で割ったような映画という印象。
追跡劇自体は、スピルバーグの十八番と言えるかもしれない。『マイノリティ・リポート』も『レディ・プレイヤー1』も、何かを巡って追い、追われる映画だった。アクションを撮るのはやはり上手い。その意味では、スピルバーグらしい作品とも言える。
ただ、アクションとして観ると、昨今もっと強い映画が多い。カーアクションにしても、もっとすごいものを撮っている映画はある。そこと比べてしまい、正直、少し退屈に感じた場面もあった。
物語には、宇宙人と信仰、特にキリスト教との関わりを巡る話がある。信仰に馴染みの薄い日本の観客には、分かりづらい部分もあるかもしれない。
開示される瞬間までは、かなり盛り上がる。しかし、物語はそこで終わる。開示によって世界がどう変わるのかは描かれず、結末は投げっぱなしに感じた。観ている間は面白かったが、結局何が言いたかったのか、思っていた話と違ったという感覚が残る。筆者が見たかったのは、開示された後の世界のほうだった。
何を言っているかわからない、宇宙人の言語
脚本は少し弱い、軽いと感じた。それでも個人的には145分を長いとは感じなかった。魅せる映画になっていたのは、カメラワークの力が大きい。長回しに見えるカットや、人の顔を映すカットは、さすがスピルバーグといったところで、観ていて楽しい映像だった。
エミリー・ブラントも大変良かった。気象キャスターのマーガレットには、ジョークを交えたコミカルな場面もあり、そのあたりも含めて良かった。
ジョン・ウィリアムズの音楽も素晴らしい。ただ、『E.T.』や『ジュラシック・パーク』と並べると、どうしても1枚落ちる。
特に印象に残るのは、宇宙人の話す言語だ。音の質感が良く、意味はわからないのに何かが伝わってくる、という種類のものではない。本当に何を言っているのかわからない。そこが逆にすごいと感じた。宇宙人の言語を描いた映画では、ドゥニ・ヴィルヌーヴの『メッセージ』もすごかったが、本作の言語もそこに並ぶ、新しい宇宙語だと思う。
劇中、宇宙人の気配が最も濃いのはこの言語の場面で、追跡劇が前に出るほど宇宙人が後ろに引いてしまった点が、物足りなさを感じた原因かもしれない。
映画としては楽しい、スピルバーグ作品としては一歩落ちる
観終わった直後、この映画は評価がとても難しいと感じた。見ている最中は入り込んで面白く、映画としてもよくできている。
それでも、スピルバーグの他の作品と並べてしまう。宇宙ものなら『未知との遭遇』と『E.T.』があり、それらと比べると、本作は一歩落ちる。
スピルバーグは、新しいものを次々に出して観客を驚かせることに長けた監督だった。新しさがないという指摘は、確かにそうかもしれない。今回は、驚くようなことがあまりなかった。




